「亜樹ちゃん、かなり 様になって来たごたるね。」
 亜樹の練習場になっている空き地に、今日は飛鳥が遊びに来ている。突きと蹴りの練習を続ける亜樹を眺めながら、飛鳥は俺にそう言った。言われてみればそうかもしれない。俺もその辺は認める。
「亜樹ちゃ〜ん。休憩せんね〜ラムネのあるば〜い!!」
 飛鳥はそう言うと、右手にラムネの瓶を2本持ち、チンチンと音を立てる。その言葉と音に亜樹の動きはピタリと止まり、キッと俺の方に顔を向け、俺を睨み付け威圧した。
「い・・・良いぜ。少し休憩だ。」
 俺がそう言うと、亜樹の顔は満面の笑みにかわり、俺達の所へ駆け寄って来て、飛鳥からラムネを受け取り、
「あしゅかしゃん。あいやと〜。」
 と言って、土管の上にちょこんと座った。
「でも、亜樹ちゃん。どうしてそげん強くなりたかと?」
 飛鳥が亜樹に質問する。俺もその辺の話しは聞いていない。



「たっくんがね。亜樹やみんなの事いじめるの・・・。だから亜樹は、たっくんをやっつけたいんだ。」
 まぁそんな事だろうとは思っていた。飛鳥は「ふぅぅぅん」と言って、うなづいている。
「それだったら俺じゃなくて、太郎に頼めばいいだろ?アイツの方が優しいぜ。」
 俺がそう言うと、
「太郎おにいしゃんは、手とか、にょにょ〜って伸びるけど、亜樹は出来ないもん。じゃくろのだったら亜樹にも出来るから。」
 俺は甘く見られてるのか?・・・まぁ俺も太郎のマネは出来ないし、子供にしちゃ良い判断かもな。それを聞いた飛鳥は、
「頑張れば強くなるくさ。亜樹ちゃん頑張れね。・・・もう一本どげんね?」
 そう言って、ラムネをもう一本差し出した。
 関係無いけど、基本的にカバンを持ち歩かない飛鳥は俺の分と亜樹の分、そして自分の分ともう一本。計4本のラムネをどこに持ってたんだろう?不思議だ・・・。
 暗くなりかけた時、練習を続ける亜樹の前に俺は進み出た。そして、俺はファイティングポーズをとり、
「・・・来い。」
 と、亜樹に指示を出す。ちょっと疲れた顔をしていた亜樹だったが、俺の言葉に顔をキリッと引き締めて、教えた通りのファイティングポーズをとった。そして、俺の太股あたりにローキックを入れる。亜樹にしてみれば、ハイキックかもしれない。 ・・・けど、その蹴りは重く、なかなかの力を感じる事が出来た。これだったら5回くらい同じ場所に蹴り込めば、なんとか中学生くらいは転ばす事が出来るはず。
「よし。今日の練習は終了。」
 俺はそう言って、亜樹を家まで送って行く事にした。
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