帰り道、亜樹は飛鳥と手を繋ぎ、「キャッキャッ」と笑いながら何か話しをしている。俺はその横を歩いていた。そして、もうすぐ亜樹の家に到着すると言う時、飛鳥が、
「亜樹ちゃん。どげんしたと?」
 と、亜樹に話しかける。亜樹は飛鳥の手を握ったまま立ち止まり、家の近くにある公園の中の何かを見ていた。
「たっくん・・・。」
 亜樹はそう言い、公園の中をじっと見ている。俺達も亜樹の目線の先を見ると、たしかにちっせえ子供が3人立っていた。そして3人の真ん中、ガキ大将っぽいのが『たっくん』って奴だとすぐに分かった。その3人組は、もう一つの3人組と向かい合っている。もう一つの3人組は、小学3.4年生のひとまわり大きなガキ。ガキ達6人は向かい合い微動だにしない。たっくんの両脇の仲間は半泣き状態になってて、多分コイツ等、喧嘩の真最中のように思えた。
「たっくん、やっつけて来る・・・。」
 こっちにも問題が残っていた。亜樹はたっくんをブッ飛ばすため俺の厳しい練習に耐え、そしてその亜樹の最大の敵たっくんが目の前にいる。亜樹のテンションは最高に上がりまくっているって感じだ。俺はしゃがみ込み、亜樹の両手をしっかり握り締めた。
「亜樹、良く聞け。強い奴が弱い奴をやっつけると、それは『弱い者イジメ』になる。たっくんがお前をイジメてたのは弱い者イジメだった。だけど今は違う。お前は今、たっくんよりも強くなったんだ。そんなんで戦ったら、お前は『弱い者イジメ』することになって、それは悪い事なんだ。」
 俺は、亜樹の目を見詰めそう言ったが、亜樹はあんまり理解していないようだった。言ってる俺も何言ってんだか分からないから仕方が無いかもしれない。
「・・・とにかく、もっと強くなるためには、自分より強い者に向かって行かなければならない。自分より強いヤツをやっつける事が出来たら、そいつは『弱い者』になるから、今度はもっと強いヤツに向かって行く、そうやって、強くなっていくんだ。亜樹も、もっと強くなりたいだろ?」
 自分でも何言ってるか訳分からないまま話しを続けているが、最後の言葉は理解したらしく、
「もっと強くなりたい。」
亜樹は、はっきりそう言った。
「・・・だったらほら、今たっくん達を『弱い者イジメ』している、小学生に向かっていくんだ。お前が戦う相手はアイツ等だ。」
 なんとか言いたい事はいった。今、亜樹がたっくんに攻撃すれば、たっくんにとってはヤブヘビになる。「泣きっ面にハニー」ってヤツだ。 攻撃の対象を小学生に向けさせ、そいつ等を亜樹がブチのめせば、たっくんも亜樹をいじめる事は無くなるだろう。
 亜樹は、「うん!!」と、返事をして、公園の中に入って行った。そして6人組の中に割って入り、小学生を凝視し、ファイティングポーズをとり、俺が教えてやった通り、
「DAMN YOU!!」
 と、意味も分からず叫んだ。亜樹には「気合の掛け声だ。」と教えただけ・・・。
 公園の外から俺と飛鳥は、亜樹の戦い振りを見物しようとしていたが、俺はひとつ重大な事に気が付き曇った顔になった。
「ざくろ・・・どげんかしたと?」
 素早く俺の顔の変化に気付き、飛鳥が俺を覗き込む。
「俺、アイツに『防御の仕方』教えてなかったんだよなぁ〜。」
 亜樹はいきなり、小学生のゲンコツを避けもせず、しっかり頭で受けていた。

『強くなるためには・・・』 終
前に戻る つづく