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金の為に愛の言葉を口にする男と、その言葉を聞くために金を落とす女。逆もまた然り… 帯で閉じられた札束が、「眠る」と言う人間の本能を麻痺させ、「夜」を知らない町… そんな歌舞伎町の中心に二階堂ビルという5階建てのビルが建っている。 1階には、しばしば店長の頭をコンコンと殴りに警官が訪れる「風俗情報無料案内所」。 2階3階は、特に綺麗好きでもない男達が通う銭湯。 5階は頻繁に店舗が替わるので現在何屋が入っているかは不明。 そんなビルの4階にある事務所が、この物語の主人公・富良戸正人(フラドマサト)が経営する「富良戸運送」。 屋号を見る限り、ただの運送業者のようではあるが、 実際は…。 「腹が減ったんですけど。」 20坪ほどの事務所内、 デスクが2つとテーブルとソファー。 壁際には大きめの棚が置かれ、「〜に関する資料1」と書かれたバインダーが整列している…。 おおざっぱに事務所内を説明するとこれだけ。 詳しく説明すると… 従業員は2人。 アダルトビデオの秘書シリーズに出るような、ショートボブにフレームの無い薄い眼鏡、グラマーな裸体を包むスーツに、太股の2分の1は露出しているような制服を着た女性がひとり。 そしてもうひとりは、 身長2m以上はあろう大男だが、体重は60kgも無いような細い男性。 顔は、歌舞伎町をフヨンフヨンと歩く、酒で判断力が麻痺したオヤジだったら給料袋をそのまま渡しても1回お願いしたいような顔立ち。その後、しらふに戻った時、彼が自分の倍近くある身長に愕然とし、彼が男性だと言う事に肩をおとす。 …そんな女顔の男性。 先ほど「腹が減った」と言った張本人でもあるこの富良戸運送の社長・富良戸正人。 「何か食べれば良いじゃないですか〜。食事もできないくらい貧乏な会社じゃないんですからぁ。」 エロ顔の秘書兼、従業員の 女性・秋沢里奈は答えた。 空腹のため、机の上で液化しそうなくらいヘロヘロしている大社長とは対照的に秘書・秋沢は、見事な指使いでキーをたたき、目の前のパソコンは生き物のようにいろいろな表情に変化している。 「何か出前ります? …と言っても社長、好き嫌い多すぎなんですものね。」 パソコンから目を離さずに、右手はキーを叩き、左手で高級寿司処「すし八」の出前メニューをユラユラと振ってみせた。 「…嫌いや。 ちょっと飯食ってくる。客来たら携帯に電話して。」 ヘロヘロの社長は巨大な体を起こし、後ろにある大きなコートハンガーから大きなコートを手に取り、出入り口へと向う。 「ツェペシュ!!私は?!」 秋沢は初めてパソコンから目を離し、出入り口に向かう富良戸運送社長を呼び止めた。 そして、『ツェペシュ』と呼ばれた富良戸運送社長は、 「寿司でも出前れば良いじゃんよ…。」 と、言い事務所を後にした。 ![]() |